このページをみてくださったあなたは「戦略を立てるとはどういうことか」「戦略を立てるにはどうすればいいのか」とお考えのはずです。
この記事は戦略的に考えるとはどういうことか、そして、戦略を立てるにはどうすればいいのかsを解説していきます。
推薦図書
白いネコは何をくれた?
佐藤義典著
中堅広告代理店に勤める主人公のストーリーに沿って戦略BASiCSというフレームワーク使ってどのようにマーケティング戦略を立てるのかが説明されています。とてもわかりやすく読みやすいです。
マーケティング担当者、マーケティング職につきたいと思っている方は是非読んでみてください。
目次
勝利の裏には戦略がある
スポーツをやられていた方はわかると思いますが、試合をするときは相手が苦手なプレーを分析し弱点をついたり、自分の得意なプレーができるようにしていませんでしたか?
力の差が相当ある相手であれば別ですが、普通力量が同じ相手と戦う場合何も考えずに試合に臨む人はいないと思います。
自分の得意なプレースタイルで戦いながら、相手の弱点を探し、どうすれば試合に勝てるかを考えるはずです。
これが戦略的に戦うということです。
戦略を立てるとはスポーツの中で誰もが自然と行っていることなのです。
何も考えずに試合をしている人はなかなか試合に勝つことができません。
試合に勝つ人は相手の弱点を突くのがうまく、自分の得意な戦い方ができる人です。
実力があることは必要条件ですが、勝利の裏には戦略があるのです。
戦略とは何か
ここで少し戦略について考えましょう。
先ほどの例のように戦略とは勝負に勝つためにあれこれ策を考えることです。
ただし、ビジネスや日常生活の中で起こる競争とは相手と自分が直接戦い合うことは少なく、第三者(消費者)が誰を勝者にするかを選ぶという構造をしていることがほとんどです。
ビジネスの文脈で戦略を定義すると
「叶えたい目的を達成するためにどこで誰と戦い、自分の持つ独自資源を誰に向けて集中させるのかを決めること」
といえます 。
この「どこで」「誰と」戦い、「独自資源」を「誰に向けて」集中させるかを決めるために戦略BASiCSというフレームワークを使って競争戦略の立て方を考えていきます。
戦略の立て方を学ぶ 戦略BASiCS
さて、いよいよ戦略の練り方を具体的に見ていきます。
戦略の立て方は一つではありません。
今回はその中でも僕がとてもわかりやすいと感じた戦略BASiCSについて解説します。
これは株式会社S&T代表の佐藤氏が考案した新しいフレームワークで、戦略立案の複雑な理論をたった5つの要素に分けて考えるとてもシンプルな考え方です。
5つの要素とは
- Battlefield(どこで誰と戦うか)
- Asset(独自資源・自分らしさとは)
- Strength(強み・差別化)
i - Customer(誰に顧客になってほしいか)
- Selling message(メッセージ)
それぞれの頭文字をとって戦略BASiCSと呼びます。
一つずつ見ていきましょう。
Battlefield(どこで誰と戦うか)
競争戦略を立てる上で初めに考えるのが
「どこで誰と戦っているのか」を認識することです。戦場と競合の定義ですね。
例えば、学生時代から憧れていた一流企業に入社しこれからバリバリ働いて出世するぞ!とあなたは思っているとします。
出世するためにはどうならなければならないのか。
優秀であることは必要条件です。しかし、それだけでは不十分です。
上司はあなた一人のパフォーマンスを見ているのではなく、他の社員とあなたを比較して出世させる部下を決めています。出世するためにはあなたと同じように出世を目ざしている同期より優秀である必要があります。
ここでは戦場は会社内の同部署になり、競合は出世を目指す同期となります。
今度はあなたが将来外資系コンサル会社に転職しようと考えていたとします。
この時も優秀であることが必要条件ですが、今度は会社の同期ではなく、外資系コンサル会社に転職しようと考えている全てのコンサルタントより優秀である必要があります。
さらに、社内で出世するだけであれば営業成績だけを考えればよかったですが、外資に行くためには英語が話せなくてはなりません。優秀さに求められる定義も変わってきます。
このように戦場が変われば戦い方が変わるのです。
逆に言えば、戦場と競合を決めなければ戦い方が決められません。
だから戦略を立てる時一番初めに考えるのがこの戦場と競合なのです。
Asset(独自資源・自分らしさ)
戦場と競合を定義した次は、独自資源、もっと柔らかく言うと「自分は何を持っているのか」を考えます。
戦略とは勝負に勝つために立てるものです。そのためには、今自分の手元にどんな武器があるのかを把握する必要があります。
自分たちの会社は日本に工場を持っていて、競合はベトナムに工場を持っていたとします。
この場合「日本に工場がある」というのは競合にはない独自な資源と言えます。
逆に競合は「ベトナムに工場がある」という独自な資源を持っていると言えます。
その他にも、より高品質な商品を作り上げるノウハウや、工場で働く職人たちも独自な資源になり得ます。
注意しなければならないのはそれが本当に「独自」な資源なのかという点です。
「戦場」にいる「競合」が持っていないものでなければ「独自」とは言えません。
独自な資源に基づいた戦略は競合に簡単に真似されない「強み・差別化」を生むことができます。
しかし、まだ独自資源はそこに資源が存在するという事実があるだけです。
次にこの独自な資源をどう「強み・差別化」に変えていくのかについて考えていきます。
Strength(強み・差別化)
ここまでで「敵を知り己を知る」ところまで考えてきました。
戦場がどこで競合はだれか、そして、自分が使える独自の資源が何かまでわかれば、次は独自資源をどう活かして戦うかを決めます。
先ほどの工場の例に戻ります。
日本に工場があるという独自資源は今の段階では「日本に工場がある」という事実があるだけです。
それ自体は強みでもなければ差別化することもできません。
工場がベトナムやフランスではなく、日本にあるという事実をどう解釈し強みへと変えるかが戦略の腕の見せ所です。
解釈の仕方は一つではありませんが、例えば
日本人によって作られる製品は外国人の手によって作るられる製品より日本人好みの製品にすることができる
と解釈すれば、日本に工場があるという独自資源から日本人好みの製品を作れるという競合にはない強み・差別化を生み出すことができます。
逆に自分たちがベトナムに工場を持っていれば、低賃金で商品を提供することができるという強み・差別化を生み出すことができるかもしれません。
このように、独自資源がわかるとどのように戦えばいいのかがわかります。
日本に工場がある、ベトナムに工場がある、ということが強みか弱みかを議論する事にあまり意味はなく、どのようにして日本に工場があるという事実を強みとして活用するにはどういう戦い方をすればいいのかを考えればいいのです。
大事なのは、事実をどう強みにして戦うかを考えることです。
ちなみにビジネスに置いて、差別化は3つのパターンに大別できます。
- 手軽軸 安くて早くて便利
- 商品軸 サービス・商品の品質が優れている・新しい
- 密着軸 一人一人の顧客に合わせたサービスを提供する
自分たちの独自資源は競合と比較して上の3つのどの軸で強みを発揮するのかを考えることで、強みの見つけ方が少し楽になると思います。
この辺りは別記事で改めて書こうと思います。
Customer(顧客は誰か)
ここまでで「戦場と競合」「独自資源」「強み」を考えました。
次はマーケティングにおいて最も重要な顧客について考えます。
そもそもなぜ顧客を決めなければいけないのでしょうか。
それは顧客を決めないと売れないからです。
自分の場合を想定して考えてみてください。
全世代に向けられて書かれた雑誌と自分の世代の興味関心に合わせて作られた雑誌、あなただったらとちらを買いたいと思いますか?おそらく後者だと思います。
25歳の自分が求める情報と40歳の主婦が求めている情報は異なるはずです。全世代に向けて作られた雑誌はおそらく自分には関係のない情報が盛りだくさんになっているはずです。だから買わないのです。
消費者は一人一人求める価値が違い、求めている価値にあった商品を購入します。
あなたの提供する価値を求める消費者があなたの顧客になりますし、それ以外の消費者を狙うべきではありません。
逆に顧客を決めれば、あなたが提供しなければならない価値が何かはっきりします。
商品が売れるために顧客を決めます。そのために消費者を分けて【セグメント】、自分たちが価値を提供する人を選びます【ターゲティング】。
どのようにして消費者を分けるか【セグメント】
消費者を分ける目的は自分たちが提供する価値を求める消費者を見つけるためです。
セグメントは顧客のニーズ別に分けます。
セグメントと言うと、
男女2区分で10代以下、20代、30代、40代、50代、60代以上
のように性別・年齢で消費者を区切るのをイメージする人が多いと思いますが、20代と言っても22歳の女子大学生と29歳のサラリーマンではニーズが異なるはずです。
あくまでセグメントの目的は自分たちの提供する価値と共鳴する顧客を見つけることなので、セグメントはニーズで分けます。
どのようにして顧客を選ぶのか【ターゲティング】
ニーズ別に消費者を分けたら、そこから顧客になってほしい顧客を選びます。
顧客を選ぶときのポイントは自分たちの強みを重視してくれる顧客を選ぶことです。
顧客は商品を買うときに競合商品と比べて価値の比較を行っています。競合より強い価値を提供できていれば顧客が自分たちの商品を買う可能性は高まります。
競合より高い価値を提供できればいい、そのために今まで「戦場と競合」「独自資源」「強み」を考えてきたのです。
Selling Message(メッセージ)
戦場・競合は誰なのか、独自資源や強みは何か、誰をターゲットにしているかなどは顧客からすると目に見えずらいものです。
実際には
- TVCM、POPのデザイン、ウェブサイト
- 販売価格
- 店舗の雰囲気、スタッフの態度
- 製品パッケージ、ネーミング
など目に見えるものから顧客は商品の価値を推し量ります。
これら顧客の目に映る全てのものに今まで考えてきた
- 誰(「競合」)と比べて(「戦場」)
- 「独自資源」に基づいたどんな「強み・差別化」を
- どんな「顧客」に
どのように価値として伝えるかを決めることがBASiCSの集大成であるSelling Messageの役割です。
具体的にはマーケティング・ミックス(4P)と言われる
- Product(商品) 強みを生かしてどんな製品を作るのか
- Price (価格) 1000円で売るのか、1万円で売るのか
- Place (流通) 商品を売るのはデパートなのか、コンビニなのか
- Promotion (販促) TVCM、POP広告、ウェブサイトでどのようなメッセージを伝えるのか
に基づいて、それぞれを決定させることになります。
株式投資USJの盛岡さんも
HOW(戦術)の詰めが甘いと真のマーケターにはなれない
と言っているように、商品に関わるすべてのものにとことん突き詰めて考え、今まで戦略を立ててきたことを顧客の目に見えるメッセージに変えることでマーケティングは爆発的な威力を発揮するのです。
integration(一貫性)
ここまでで戦略BASiCSの各要素を学んできました。
最後に戦略の一貫性について解説します。
戦略には答えはありません。究極的にはやってみなければ効果はわかりません。
しかし、一つだけ言えるのは一貫性のない戦略は間違いです。
日本に工場があるのに、海外の流行に合わせた商品を作ってしまう
安さで勝負しているのに人件費の高い人ばかり雇っている
顧客に密着したサポートが売りなのに、現場のスタッフがサポートを簡略化しようとする
これらは戦略の一貫性が取れていません。
一貫性のない戦略は自社の強みが十分発揮されず、また競合に対して差別化されないため失敗します。
戦略BASiCSのワークフローの最大のポイントは各要素を個別で考えないということです。
戦場と競合を決めて初めて独自資源がわかるように、顧客を決めると戦場と競合が決まるように、全てはリンクしています。
全ての要素に一貫性を持った戦略を立てることが戦略BASiCSで最も重要な点です。
まとめ
戦略とは「叶えたい目的を達成するためにどこで誰と戦い、自分の持つ独自資源を誰に向けて集中させるのかを決めること」です。
これはマーケティングや経営だけでなく、日々の生活の中で叶えたい目標がある全ての人に応用できる思考法です。
この記事を読んでくれた方には是非戦略の立て方をより深く研究していただき、叶えたい目的を達成する人が一人でも多く増えればと願っています。
参考図書
白いネコは何をくれた?
佐藤義典著