- どうやって会社・業界を選べばいいの?
- 将来安定した収入を得られるようにしたい。会社選びどうすればいい?
こんな疑問に、ベンチャー企業で人事と事業責任者を経験した著者の立場から、これからの不安定な将来で「安定した人生」を送るための会社・業界の選び方について解説する。
目次
不安定な時代の「安定」は会社規模ではなく抜擢される個人になること!
マイナビが2020年4月24~30日に実施した21年卒向けの意識調査で、会社選びで重要視するのは
- 企業経営が安定している
- 自分が成長できる環境がある
が上位2位。
「安定した会社に入りたい。けど、自分の実力も付けたい」
というのがこの結果の示すところだろう。この考えは必然と言える。
『マーケティングとは「組織革命」である。』の中で、人間の本質は「自己保存(自分の生存確率を最優先すること)」とある。
つまり、学生は皆自分が将来安定して収入を得た生活ができる選択肢を本能的にかぎ分け選択している。
この記事を執筆している2020年6月時点の情報では、新型コロナウイルスの影響で20年卒の学生には就職人気ランキング5位だったANAは2020年1~3月期の連結最終損益が594億円の赤字。2021年卒、2022年卒の新卒採用は一時中断になっている。
参考:ANA、新卒採用活動を一時中断…客室乗務員や地上職など対象
また、少し前の話だが、シャープが台湾の企業鴻海に買収され、2015年8月に45歳以上の社員に希望退職を募り3200人以上の社員が退職というなのリストラに合っている。
このように大手でも会社が急に倒産・買収される時代に僕らはいる。
会社は社員を終身雇用することは保証できない。実際、会社の平均寿命は30年と言われていて、一方僕らは寿命が伸び80歳まで働く世代だ。
22歳から80歳まで約60年働く間に少なくとも一回は会社が潰れる計算になる。
つまり、これから社会に出る学生は就職する会社は将来一度潰れる前提で自分のキャリアを考える必要がある。
そんな時代の安定とは何か?
それは一つの会社に依存せず、様々な会社から「君が必要だ!」と抜擢される人材になることだ。
勤めている会社はもちろん、他の会社からも「ウチにきてくれ」とスカウトされる。または、転職市場に出ればすぐにスカウトされる。
こんな状態になる。これが会社の栄枯盛衰に関係なく一個人が取りうる最も安定したキャリア戦略だ。
では、実力とは何か?
長年経営レベルの人材の転職支援・ヘッドハンティングをしてきた岡島悦子氏によると、実力は
実力(市場価値)=能力×実績×意欲
の3つの変数で成り立つと言う。
3つの変数のうち、就活生が会社選びで意識すべきは「能力」と「実績」を伸ばせる企業だと著者は考える。
※各要素について細かく知りたい人は「人脈力」を読んで欲しい。
能力と実績をつけずに、会社の言われた通りの仕事だけをして、会社の中でしか活躍できない人材は、会社の業績が傾いた時に最も割りを食うことになるので注意した方がいい。
シャープがリストラを取材した記事がそれを物語っている。
シャープの技術者なら転職も楽でしょ?と言われますが、それは本当に優れたごく一部の人間。少なくとも、工場勤務レベルでは全く当てはまりません。去年に自主退職した方達は、海外メーカーに引き抜かれたという話しもありましたが、中小企業で給料が大幅に下がりながら働いている方がほとんど。
若手が実力を証明するには能力と実績が必要。若手のうちは実績を積める会社を選べ!
今後食いっぱぐれない安定したキャリアを歩むためにファーストキャリアとしてどんな会社を選べばいいのか。筆者は以下の3つがポイントだと考える。
- 若手がたくさんチャレンジできる成長期の会社
- 年功序列ではないフラット文化
- 社内の教育制度が整った会社
成長期の会社は若手がチャレンジするチャンスがたくさんある
すべての事業にはライフサイクルがある。
導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分けられていて、事業が大きく変化するのが成長期だ。
この頃の事業は毎月新しいスタッフが投入され、売上は右肩上がり。社内の景気もよくインセンティブが貰えやすくてバブル状態にあることが多い。
また、事業がどんどん成長するので毎週仕事の内容が変わっていく。
この状態では人手が常に足らない状態にあるので、若手の裁量が大きくなる。(正確には1から指導する余裕がないから、目的だけ与えてあとは好きに進めて!となる)
そして、事業自体が市場の追い風を受けているので若手でも成果を出しやすい。
世の中の人がまだガラケーを使ってる中、iPhoneが出始めたばかりで、みんながiPhoneを欲しがっている。そういう時期のApple社のような状態だ。
商品を買いたいお客さんが増えるので、売上を増やす、受注を増やすことが比較的容易な状態。
著者が勤めている会社でも、成長期に営業でNo1の実績を出したのは社会人経歴が長い社員ではなく、入社三年目までの若手だった。
若手のうちから裁量権が欲しいと考える人は、この状態の会社を探した方がいい。
年功序列文化は若手にとって最大の成長阻害要因だから気を付けろ!
実績ではなく年功序列で職位が決まってる会社は気をつけたほうがいい。年功序列は若手が挑戦しづらい組織構造になっているからだ。
人間の本質は自己保存。自分の生存確率が高くなるような意思決定をするようDNAレベルで本能に刷り込まれている。
年功序列で職位が決まる会社は、若手よりも年配の上司たちがチャレンジをして失敗した出世候補から外されてしまう。という強迫観念から今までと同じやり方で進める=部下にチャレンジをさせない意思決定をするようになってしまう。
こういう会社では口ではチャレンジ精神!と言っていても、チャレンジしたことを評価するor失敗しても減点しない評価制度にしないとそのように組織が動かない。
若手はいくら上司に提案しても上司が動かないのでいつしか提案すらしなくなる。
いつの間にか挑戦する機会すら得られずに、身についたのは社内の根回し力なんてことにもなりかねない。
社内の教育制度が整っているかは、会社の卒業生を見ろ!
社内の教育制度が充実している会社は能力・実績を上げる手助けになる。
ここで言う教育制度とは、マナー研修・電話対応研修のようなものではなく、会社が培ってきた成功事例を元にしたビジネス成功の秘伝のタレを伝授する、そんな教育制度だ。このような企業に入ることができれば、そうでない企業に入った時より自分の能力を格段に早く向上させることができる。
どんな企業が素晴らしい教育制度を持っているか。それは会社の卒業生を見れば想像つく。
志望する企業があるのであれば、「○○出身者」と検索してみよう。会社から独立して活躍する人がいる会社は大抵独立した人の記事が出ている。
例えば、活躍する卒業生が多いリクルート。
「リクルート出身」と検索するとリクルート出身者は本当に優秀なのか | PRESIDENT Onlineという記事が出てくる。
優秀な人材は独立していく時代なので、こういう記事を見れば会社の教育制度がどんなものか予測を立てられる。
ちなみに、会社の卒業生がそもそも多くない中小・ベンチャー企業ではあまりこういう記事は出てこない。
また、中小・ベンチャー企業は教育制度を作る余裕がなく、仕事をしながら学んでいくOJTの形式になっていることが多い。実際にはOJTという放任主義の可能性もあるが。
放任主義故の自由環境の中で自分の力でのし上がっていくのか、ある程度の教育制度が整った大手で学んでいくのか。自分の性格との相性だったりするのでここはよく考えよう。
若手が成長しやすい土壌の会社はどこか!?
ここまで会社選びの軸を説明してきた。著者の意見では若手のうちに能力・実績を上げられる会社を選べという主張だが、今度はどうやってそんな会社を探り当てるのか?を説明する。
ベンチャー編:経営陣の価値観・雰囲気、社員が尊敬できるかで選べ!
ベンチャー・中小企業の場合、会社の雰囲気や社員の成長マインドは完全に経営陣に影響を受ける。
経営陣が営業畑出身の人で構成されていれば、会社は必然と営業チックな雰囲気になる。
逆に技術系上がりの経営陣で構成されていれば、営業よりはプロダクト開発やマーケティングに力を入れていることが多い。
また、ベンチャー・中小の場合教育制度が整っていないことが多い。社員を教育する余裕とスキルがない会社がほとんど。
稀に、役員の中に若手の教育に力を注いでいる、または、そういうことに興味を持っているマネージャーが率先して企画していることがある。
面接の時に「御社ではどうやって若手の教育をしてるんですか?」と聞いてみるといいだろう。
もう一つ、ベンチャー・中小の場合一緒に働く社員が優秀・尊敬できるかがかなり大事なポイントになる。
結局自分の上司になる人が優秀であれば爆発的にスキルアップすることができるが、ボンクラサラリーマンの元に配属されれば自分の能力を引き出してもらえない。
自分の直感で面接している人を尊敬できるかで判断するのがよい。
大手編:会社の卒業生が活躍している企業一覧
大手に就職したい、しかも自分のスキルも上げたい。と思っているなら会社の卒業生が活躍している会社がいい。
先ほど言った「株式会社○○ 出身者」で出てきる記事を見るのがいいだろう。
著者の知る範囲で、以下の企業は卒業生が大活躍している。優秀な人材と、人材を育成する仕組みがあるのだと思う。
- リクルート
- 楽天
- サイバーエージェント
- DeNA
- マッキンゼー
- ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)
- パーソルグループ
- GREE(グリー)
業界選びはどうする!?安定した業界なんてあるのか!?
最後に業界選び悩んでいる学生に小さなヒントを。
実は、世の中にどんな会社があるかまだわからない学生のうちに、業界を絞り込みすぎる必要はないと考えている。よほど強い想いや原体験がない限り。究極就活の会社選びにBESTな答えはない。入ってみないとわからないのだから。
ただし、この選択は取らない方がいいというBADケースはある。
それは衰退産業に属する会社に入社することだ。
これから衰退していく産業では、若手が活躍するチャンスが訪れづらい。できれば成長産業に身を置いた方が、会社の成長とともに抜擢やチャンスが巡ってくる確率が高くなる。
ではこれから成長産業になる業界はどこか?
これにはアメリカのガートナー社が発表しているハイプサイクルが役に立つ。
ハイプ・サイクル(英語: hype cycle、ハイプ曲線)は、特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図である。
参照:wikipedia
新しいテクノロジーは初め過度な期待を持たれ、期待に技術力がまだ追いつかないと世の中が気づくといっとき注目度が下がり、徐々に技術力がついてきて成長していく。
このようなテクノロジーが普及していくまでの過程を示したものだ。
この中で成長期、または、成熟期にある技術分野はこれから投資が加速され成長が見込まれている。
BESTな答えはないが、最先端のテクノロジーに触れていたいと考えている学生には参考になるはずだ。
まとめ
- これからの安定は「君が必要だ!」と抜擢される人材になること
- そのためには若手は能力と実績を身に着ける
- 若手が実績を作るのを阻害する環境要因は年功序列文化
- 若手が実績を作りやすい会社は成長しているベンチャーor卒業生が活躍する大手企業
他にも就活関連の記事を書いてるので、就活で苦戦している人は是非チェックしてみて欲しい。
▼この記事の参考図書▼